グアテマラで布教活動をおこなっていたエホバの証人の信者が殺害された事件について
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すでにご存知の方も多いと思いますが、今月4日、グアテマラで布教活動を行っていたエホバの証人の日本人の若い女性信者たちが襲われ1人が死亡、1人が大けがをして病院に入院して手当てを受けている、という報道がありました。
元エホバの証人2世の私は、このニュースを知って複雑な気持ちになりました。
すでに多くの方の注目を集めている同事件については様々な意見があるようですが、今回の事件の被害者の方々は本当に不幸だったと思います。
「自己責任だ」という意見もあるかもしれませんが、もしも被害者のお二人が、私のような育てられ方をされたエホバの証人2世信者だったとしたら、「危険な地域では布教活動はしない」という判断を下すのは難しかったのではないかなと思います。
私の場合は過去記事でも書きました通り、生まれた時にはすでに母が信者だったため、乳児の頃からエホバの証人の集会、大会、布教活動に参加させられており、家でも移動中の車内でも毎日のように宗教教育が行われていたため、「間もなく来るハルマゲドンでエホバの証人以外の人類はエホバによって抹殺される。人類を救うために布教活動をしなければいけない」という教えが染み込んでいました。
子ども時代は、エホバの証人(ものみの塔)の教えを聞かされない日はほぼありませんでした。熱心なエホバの証人の子どもとして生まれてしまった私には、エホバの証人の教育を拒否、抵抗することは不可能でした。
2000年に脱会に成功しましたが、脱会から18年が経過した現在でも、信者時代の考え方、恐怖心が残っており、エホバの証人問題を考え始めると、どうしても気持ちが落ち込んでしまいます。
このホームページを運営し始めてからも、子ども時代の恐怖がよみがえり、悪夢で苦しむことがありました。教団によって苦しんでいる人たちの実情を知るほどに「エホバの証人の子どもたちを助けるために、どうして今まで行動を起こさなかったのか」と自分を責めてしまうため、ある幼馴染からは「もうホームページはやめてほしい。落ち方がひどいから見ていられない。一人の女性として普通の幸せを味わってほしい。心が強い人だったらできるかもしれないけど、真彩ちゃんの場合は弱すぎて無理だと思う」と言われたこともあるほどひどく落ち込んだこともありました。エホバの証人の教育は、親の洗脳度合いや子どもの性格などにもよりますが、それほどまでに強く長く影響を与えるものなのです。
自分自身が体験してきたことから考えても、この事件の被害者がもしエホバの証人2世(または3世)だった場合は「自己責任」という言葉では済まされないのではないかと思います。
特に、エホバの証人に指示を出す幹部たち(「統治体」と呼ばれています)は安全な場所にいながら、信者たちには「地の果てまで」布教をするように教え、危険地帯に行くことをもいとわない姿勢を称賛していることに疑問を感じます。
例えば、エホバの証人の公式ホームページには「全世界で収穫を行なう福音宣明者たち」と題するページの中で下記のように書かれてます。(教団の公式ホームページですので、不快に感じる方はクリックしないことをお薦めします)
人間の中で最も偉大な福音宣明者であったイエス・キリストは,1世紀に一つの組織を発足させ,その組織は「地の果てまで」福音を宣明しました。またイエスは,この時代においても同様の福音宣明の業がなされることをあらかじめ述べておられました。現在それを行なっている組織はエホバの証人で構成されており,エホバの証人は210の国や地域で急いで熱心に神の王国の良いたよりを宣べ伝えています。
上記に続いて「エホバの証人の宣べ伝え教える業から益を受けた人たちを幾人か紹介しましょう」とメキシコ、インド、ベルギー、ポルトガル、タイで信者が布教活動を行った結果、現地で新たな信者を獲得したことが述べられています。
また、ケニアで起きた出来事として、あるギャングの首領が裁判を待つため刑務所に監禁された時に、以前にエホバの証人が自分の家に何度も来たことを思い出しエホバの名前を呼んで祈り、自分の罪を認めたところ、比較的軽い刑を言い渡され、そのうちに突然刑期が半分に減り、釈放されてから信者になった、という話が載っていました。そのページの締めくくりの言葉は以下です。
以上の例は,エホバの証人が「地の果てまで」福音を宣明する使命と責任をどのように果たしているかを示す,ごくわずかの例にすぎません。こうした経験は実際には無数にあるのです。では,エホバの証人が今日における真の福音宣明者であることをあなたは疑いますか。
上記のように、エホバの証人の幹部たちは「自分たちは信者たちに強制はしていない、信者たちが個人的判断でやっているだけだ」と言い逃れができる書き方をしています。実際、今回の事件を受けてもこのような報道がなされています。
2人が活動していた宗教団体の中米の担当者はNHKの取材に対し、「2人は3年前、グアテマラの人たちに聖書を知ってもらうためボランティアとして現地に住み始めた。2人とも自費で活動していた。悲惨な事件に巻き込まれたことが残念でならない」と答えています。
(NHK NEWS WEB「20代日本人女性1人殺害 1人重傷 グアテマラ 家に強盗か」より引用)
今回の事件で亡くなられた木本結梨香(キモト・ユリカ)さんは、教義上は「復活という希望がある。楽園で会える」ということになるのでしょうが、教団からすでに脱会した私としてはとてもいたたまれません。フルート奏者として将来があったとの情報も見ましたが、とても残念です。
布教先のグアテマラで26歳という若さで命を落とした木本結梨香さんのご冥福をお祈りすると共に、大けがを負い入院をしているという茂呂澤(モロサワ)ちえさんの一刻も早いご回復をお祈り申し上げます。
川島真彩
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