なぜ私の母はものみの塔に入信し、その結果私のような子どもができあがってしまったのか。

「どうして母はものみの塔に入信してしまったのだろう…。母がエホバの証人にならなければ、こんなに苦しまなくて済んだのに…」

長い間私はそのように感じていました。「エホバの証人以外の人類は間もなくハルマゲドンで抹殺される。そして地上の楽園でエホバの証人たちは永遠に生きる」という、絶望しか感じない終末思想を説くものみの塔組織のどこに魅力を感じて入信したのか、理解できませんでした。
私は長い間そのような怒りを持ちつつも、脱会後は母やものみの塔組織にあまり興味がなかったので、母の入信理由を深く考えたことがありませんでした。

今さらながら気になり始めたので、エホバの証人関連の本やサイトを読み返して想像してみました。

母が入信してしまったがゆえ、どのようなエホバの証人流の子育てをしてしまい、私のような自殺願望を持つ子どもができあがってしまったのかについてまとめてみました。

母がものみの塔に入信した理由を考える

「エホバの証人の子どもたちは、小奇麗な格好をしていて真面目で素直で礼儀正しい」ーひと昔前まで、そのような印象を持つ一般の方々も多かったようです。

そのような子どもの姿を見て「うちの子もこんな風な良い子に育ってくれたら」と願い、自宅に訪問してきた子連れ信者の話に耳を傾け、何度も訪問を受けるうちに教義を信じるようになる主婦たちが数多くいました。恐らく母が入信した一番の理由は、このような他の多くの主婦信者たちと同様、「聖書(実際にはものみの塔組織)から学ぶ子どもの教育方法」に惹かれたためだと思います。

母の入信時期は、母の結婚後から私が生まれるまでの間、ということしか分かりませんが、きっと子育てについての指針や子育て仲間が欲しかったのだと思います。(なお、ものみの塔の教義を知り信じるようになることを、信者たちは「真理を知る」という言い方をします)

信者から話を聞くようになり、研究生と呼ばれる少しずつ教義を学び始めた勧誘対象の方が集会に行くようになると、信者たちが次々と集まってきて、満面の笑顔で「ようこそいらっしゃました!」と大歓迎を受けます。きっと母もそのラブシャワーに感銘を受け、どんどんはまっていったのだと思います。

エホバの証人社会では、バプテスマ(洗礼)を受けた信者はお互いを「兄弟」「姉妹」と呼び合い、落ち込んだりしても「励まし」と呼ばれる独特なやりかたでやる気を出させるシステムがあります(しばしばこの「励まし」が圧力になることもあります)。このような、一般社会ではまずあり得ないエホバの証人社会独特のウェットな人間関係も魅力的だったのでしょう。

また、信者たちは「虐げられている人々のための慰め」(教団の公式サイトより抜粋)として教団の教えを家の人に伝えるため、「自分は虐げられている。不当な扱いを受けている」と感じている人たちにとっては特に、エホバの教えを希望の光のように感じたのかもしれません。
そして教団の中にいると「クリスチャンの交友を通してさわやかさを得る」「宣教奉仕はさわやかさをもたらす」「家族の崇拝からさわやかさを得る」(教団の公式サイトより抜粋)…といった言葉を繰り返し聞かされ言わされるので、「熱心にエホバの宗教活動をするほどさわやかになる」と錯覚していったのかもしれません。

なぜエホバの証人の子どもたちは行儀が良かったのか ー その背景にあるもの

伝道先の家の方々(恐らく私の母も)に時として感銘を与えるほど、行儀の良かったエホバの証人の子どもたち。
そもそもなぜそれほど行儀が良かったのかというと、エホバの証人の信者の親たちは普段から子どもたちに徹底した「訓練」を行っていたからです。

それは大人から見てきちんとした行動をする良い子は非信者から好感を持たれますので、子供を新規信者獲得のために効果的なマネキン人形にする目的と、将来の有能な伝道者を養成する目的があります。
このように伝道の時に良い子の態度を取り、王国会館でおとなしく椅子に座って勉強している子供を見た何も事情を知らない一般人は「うちの子と違ってエホバの証人の子供はなんてしっかりした良い子が多いんだろう、私がこの宗教に入ったらうちの子供も良い子になるかも?」という錯覚を起こさせる効果があります。
昼寝するぶたより)

しばしばその「訓練」には体罰が用いられていました。「エホバのみ名に誉れをもたらさない行動を取った」という理由により体罰が行われるのです。
エホバの証人のコミュニティは、子どもが子どもらしい振る舞いをすると罰せられる世界でした。

ものみの塔の出版物に書かれている子育てに関する短絡的な思考についての資料と、そのような子育てを受けた方の回想を以下にご紹介します。
子供が子供でいられない世界 | エホバの証人研究(ブログ)
習慣と信条 – 子どもの訓練 | エホバの証人研究
エホバの証人2世の方の子ども時代の回想『カルト教団 エホバの証人により奪われたモノ』

コメント

“なぜ私の母はものみの塔に入信し、その結果私のような子どもができあがってしまったのか。” への6件のフィードバック

  1. Tのアバター
    T

    私は元エホバの証人です。いわゆる二世でした。
    「誕生会、クリスマス、七夕、ひなまつり、節分、正月、祭り、焼香、国家・校歌斉唱、選挙、格闘技、明けましておめでとう、と言うこと、年賀状を書くこと、運動会での応援合戦や騎馬戦」、他。
    本当に多くのことが禁止されていました。
    学校でクラスの全員が七夕をしている時、教室の後ろの壁沿いに立ちただそれを見ていた、そんなことを思い出しました。
    当時の辛い思い出です。

    1. Maayaのアバター

      Tさん

      コメントをありがとうございます。
      本当にものみの塔は多くの禁止事項を作り、信者の子どもたちに大変な苦痛を味わわせてきましたね…。
      Tさんも、本当にお辛かったことと思います。

      私も最近JW関係の本を読み返したり記事を書いていくうちに、心の奥にしまっていた辛い過去がどんどん思い出されてきました。

      今回の記事と関連して、エホバの証人の子どもたちが学校で直面する恐怖・いじめについての記事を今、書いている途中です。
      多くの方に、エホバの証人の子どもたちが味わってきた苦痛について知っていただき、このような人権侵害がなくなることを願っています。

  2. 竹千代のアバター
    竹千代

    初めまして、竹千代君です。私の、私たちの幼少期に似ているためです。

    私の母親からのインタビューです。

    『今の私なら、若くて愚かだった私自身に つくづく腹が立ちます。あの恐ろしい鉄格子のような世界の正体に 若かった私は気づくことができませんでした。ただ熱病に駆られたように何も考えずに、偽りの信仰の洗礼を受けてしまったのです。
    私自身 もともと敬虔な信者ではなかったし、洗礼の儀式の直前で恥を忍んで謝ってでも断るという選択肢もあったはず。
    "私は 楽園にはいきません。すいません" とね。でも若さゆえの欲望と好奇心に突き動かされた私は 愚かにも偽りの宗教の懐に飛び込んでいったのです。
    思いもよらぬ運命がその先に待ち受けていることなど知る由もなく ね。今でもまだ 当時の自分を赦せずにいます。

    排斥後、排斥者の同窓会であの組織における恐ろしい話をたくさん聞きました。子供たちが、親をはじめとする大人たちの手によって心も体も侵されていたのだと、特に女の子が大勢、長老によって毒牙にかけられた それが事実だと知った時は本当にショックでした。
    でも、それが自分自身が歩んできた人生とは全然結び付けられず、その意味では安心していたのです。私は敬虔な信者というわけではなかったし、直接その事件にかかわったわけじゃない。
    ましてや 何も教えられなかったから何も知らなかったし、私には関係ない。だから私に罪も非もない。私は悪くない。
    そう開き直って安心していました。

    自分が入信した年に、ご存知、キャンディスさん(排斥後、裁判を経て大学に入学卒業し専門のサイレントラムズの弁護士になる)が最初に毒牙にかけられたと聞きました。(川島注:私が調べた限りでは、キャンディスさんのこちらの経歴については記事を見つけることはできませんでした。情報ソースをお持ちの方はコメントいただけば幸いです)

    その時です。ようやく気がつきました。当時若かった未熟だったなどということは何の言い訳にもならない。
    あの時 目をちゃんと見開いてさえいれば、知らない人を毅然とした態度で退けていれば、こんなことにはならなかったし、真実に気づけたのだと・・・・。』

    1. Maayaのアバター

      竹千代さん
      コメントをありがとうございました。
      なお、追加でご投稿されたあと2つのコメントにつきましては、以前ある方もご投稿された殺人事件に関するものかと思われ、当サイトの趣旨に合わないと判断しましたため掲載を見合わせていただきました。
      恐れ入りますが何卒ご了承いただけたらと存じます。

  3. りのアバター

    はじめまして。俺もです。2歳の頃からつれていかれました。薄々気付いたのは中学の三年高校受験で少し行かなくていい時期があり少し洗脳がとけ、高校からは行かなくなり、、、これ以上は書くときりがないので。その後洗脳解けるのに10年くらい。その間はどうせハルマキドン(笑)で死ぬんだからと自暴自棄になり、薬や酒、半グレ集団に入り悪さを繰り返しましたが、根がそんな人間ではないので、そこにも居場所はなかった。現在40代ですが、スーツや真面目な格好や言葉は今だにヘドがでます。昔無理やり親に真面目な格好やら何から何まで強制されたので。現在親になり、仕事も順調ですが、結局20代半ばくらいまで続いた洗脳で人生狂ったのは間違いないです。こんなサイトや、インターネットが当時あればと。ただこうやってこのサイトを作ってくれた貴方は勇気があり尊敬します。少しでも多くの子供がこの洗脳から抜け出してくれることをねがってます。

    1. Maayaのアバター

      りさん 
      初めまして。コメントをありがとうございます。
      りさんも大変な思いをされてこられたのですね…。
      私も、エホバの証人の子どもたちが、私たちのような苦しみを味わうことがないよう、願っています。

Maaya へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Submissions that do not contain Japanese will be ignored. (For Anti-Spam)