なぜ私の母はものみの塔に入信し、その結果私のような子どもができあがってしまったのか。

エホバの証人の児童虐待

信者の子どもが死亡する事件(エホバの証人「せっかん死」事件)が起きるほど、地域や家庭によってはひどい体罰が行われてきましたが、ものみの塔は「一部の信者が勝手にやったこと。組織はそのような指示は出していない」として非を認めず、謝罪も訂正もしていません。
この事件は、信仰を理由にして反省の態度を示せば、子どもを殺しても執行猶予で済むという司法の限界も見せつけました。輸血拒否で子どもを死なせた親もそうですが、子どもを殺した親を実刑にできないこの状況では、組織は傷を負うことなく反省などするはずもありません。

ルポライターの米本和広氏はご著書『カルトの子』で下記のように書いています。

日本にムチがやってきたときのことは、元二世の尾形健(43)が体験していた。
健は私が取材した元二世の中では最年長である。
「あれは確か1965年の、小学校2年生のある火曜日での集会のことでした」という。
集会の終了間際に、日本支部から新しい「よい便り」が届いたとして次のことが会衆内で発表された。
「子どもの心には悪魔が入っている。悪魔を追い出すために、聖書に書かれている通りムチでお尻を叩きなさい」。
そのあと長老の補佐役が「男物の細身のベルトを使って、椅子などにひざまずかせて、20回くらい子どものお尻をたたいてください」と補足した。

「おふくろはさっそく懲らしめを実行した。ところが、細身のベルトはへなへなしてうまくいかない。そこで、おふくろは足踏み式ミシンのベルト(直径8ミリ)で、20回思いっきり叩いたんですよ」

「震えるぐらい痛かった。今でもあの痛さは覚えている。それからですよ、会衆内でミシンベルトが流行るようになったのは。おふくろが自慢そうに効果があったとみんなにしゃべったもんだから。あとでみんなに聞くと、僕は会衆内で懲らしめ第二号だったそうです」
このときから、30数年間もの長きにわたって懲らしめが続いてきたのである。

ものみの塔の出版物『あなたの家族生活を幸福なものにする』(現在は絶版となっています)には、以下のように記載されていました。
「学齢前の時期は、生涯にわたって支えとなる一連の価値基準を植え付けることを始める絶好の機会です。子供を訓練することはどんな職業よりも尊く、どんな仕事よりも重要です。そしてそれを始める時は、子供の誕生直後、その幼い時です」
「体罰は子供の命を救うものとなります。なぜなら、神のみ言葉聖書には、『単なる少年から懲らしめを差し控えてはならない。あなたが彼を細棒でたたいても、彼は死なない。細棒をもってあなたは彼をたたくべきである』とあるからです」

東京理科大非常勤講師でセラピストの服部雄一氏は、調査論文「エホバの証人の児童虐待」(98年)に39人の元信者(元研究生を含む)を対象にアンケートと聞き取り調査を行いまとめました。
それによると、39人のうち90%が子どもを叩くように教えられ、80%が集会などで体罰を目撃し、85%が周囲から叩くように圧力を受けている、ある人が可哀相だとムチを打つのをためらっていると、周囲から「霊性が低い人、子どもをサタンから守れない人」と陰口を叩かれた、ということでした。

「生後3ヶ月からムチ打ちを行い、その子が小学校2年生になってもムチの傷跡が残っている」(『カルトの子』より)という事例もあるほど、一般社会では考えられないような「ムチ」という体罰が使われる「訓練」が長年に渡って行われてきたため、子どもたちはムチに対する恐怖とハルマゲドンで滅ぼされる恐怖によって「従順」になっていたのです。

実際、私が子どもの頃、ある女性信者からひどい鞭打ちを受けて、泣きはらした目をした幼い子どもを見て、他の信者が「アラー!いいお顔になったわね~!」と耳を疑うような発言をしていたのを覚えています。
エホバの「真理」に従って、周りの信者たちも子どもへの虐待を扇動していました。
鞭打ちを行うことによって、子どもの心からサタンを追い出した、ということになっていて、ものみの塔組織に忠実なエホバの証人ほど、人としての心を失っていたように思います。

また最近、ハルマゲドンの恐怖が幼い子どもたちに植え付けられていく宗教教育が非常にリアルに描かれているブログ「おおきないしがおちてくる」を見付けましたが、私が子どもの頃母から教え込まれていたことをそのまま書いてくださっているような文章でした。

コメント

“なぜ私の母はものみの塔に入信し、その結果私のような子どもができあがってしまったのか。” への6件のフィードバック

  1. Tのアバター
    T

    私は元エホバの証人です。いわゆる二世でした。
    「誕生会、クリスマス、七夕、ひなまつり、節分、正月、祭り、焼香、国家・校歌斉唱、選挙、格闘技、明けましておめでとう、と言うこと、年賀状を書くこと、運動会での応援合戦や騎馬戦」、他。
    本当に多くのことが禁止されていました。
    学校でクラスの全員が七夕をしている時、教室の後ろの壁沿いに立ちただそれを見ていた、そんなことを思い出しました。
    当時の辛い思い出です。

    1. Maayaのアバター

      Tさん

      コメントをありがとうございます。
      本当にものみの塔は多くの禁止事項を作り、信者の子どもたちに大変な苦痛を味わわせてきましたね…。
      Tさんも、本当にお辛かったことと思います。

      私も最近JW関係の本を読み返したり記事を書いていくうちに、心の奥にしまっていた辛い過去がどんどん思い出されてきました。

      今回の記事と関連して、エホバの証人の子どもたちが学校で直面する恐怖・いじめについての記事を今、書いている途中です。
      多くの方に、エホバの証人の子どもたちが味わってきた苦痛について知っていただき、このような人権侵害がなくなることを願っています。

  2. 竹千代のアバター
    竹千代

    初めまして、竹千代君です。私の、私たちの幼少期に似ているためです。

    私の母親からのインタビューです。

    『今の私なら、若くて愚かだった私自身に つくづく腹が立ちます。あの恐ろしい鉄格子のような世界の正体に 若かった私は気づくことができませんでした。ただ熱病に駆られたように何も考えずに、偽りの信仰の洗礼を受けてしまったのです。
    私自身 もともと敬虔な信者ではなかったし、洗礼の儀式の直前で恥を忍んで謝ってでも断るという選択肢もあったはず。
    "私は 楽園にはいきません。すいません" とね。でも若さゆえの欲望と好奇心に突き動かされた私は 愚かにも偽りの宗教の懐に飛び込んでいったのです。
    思いもよらぬ運命がその先に待ち受けていることなど知る由もなく ね。今でもまだ 当時の自分を赦せずにいます。

    排斥後、排斥者の同窓会であの組織における恐ろしい話をたくさん聞きました。子供たちが、親をはじめとする大人たちの手によって心も体も侵されていたのだと、特に女の子が大勢、長老によって毒牙にかけられた それが事実だと知った時は本当にショックでした。
    でも、それが自分自身が歩んできた人生とは全然結び付けられず、その意味では安心していたのです。私は敬虔な信者というわけではなかったし、直接その事件にかかわったわけじゃない。
    ましてや 何も教えられなかったから何も知らなかったし、私には関係ない。だから私に罪も非もない。私は悪くない。
    そう開き直って安心していました。

    自分が入信した年に、ご存知、キャンディスさん(排斥後、裁判を経て大学に入学卒業し専門のサイレントラムズの弁護士になる)が最初に毒牙にかけられたと聞きました。(川島注:私が調べた限りでは、キャンディスさんのこちらの経歴については記事を見つけることはできませんでした。情報ソースをお持ちの方はコメントいただけば幸いです)

    その時です。ようやく気がつきました。当時若かった未熟だったなどということは何の言い訳にもならない。
    あの時 目をちゃんと見開いてさえいれば、知らない人を毅然とした態度で退けていれば、こんなことにはならなかったし、真実に気づけたのだと・・・・。』

    1. Maayaのアバター

      竹千代さん
      コメントをありがとうございました。
      なお、追加でご投稿されたあと2つのコメントにつきましては、以前ある方もご投稿された殺人事件に関するものかと思われ、当サイトの趣旨に合わないと判断しましたため掲載を見合わせていただきました。
      恐れ入りますが何卒ご了承いただけたらと存じます。

  3. りのアバター

    はじめまして。俺もです。2歳の頃からつれていかれました。薄々気付いたのは中学の三年高校受験で少し行かなくていい時期があり少し洗脳がとけ、高校からは行かなくなり、、、これ以上は書くときりがないので。その後洗脳解けるのに10年くらい。その間はどうせハルマキドン(笑)で死ぬんだからと自暴自棄になり、薬や酒、半グレ集団に入り悪さを繰り返しましたが、根がそんな人間ではないので、そこにも居場所はなかった。現在40代ですが、スーツや真面目な格好や言葉は今だにヘドがでます。昔無理やり親に真面目な格好やら何から何まで強制されたので。現在親になり、仕事も順調ですが、結局20代半ばくらいまで続いた洗脳で人生狂ったのは間違いないです。こんなサイトや、インターネットが当時あればと。ただこうやってこのサイトを作ってくれた貴方は勇気があり尊敬します。少しでも多くの子供がこの洗脳から抜け出してくれることをねがってます。

    1. Maayaのアバター

      りさん 
      初めまして。コメントをありがとうございます。
      りさんも大変な思いをされてこられたのですね…。
      私も、エホバの証人の子どもたちが、私たちのような苦しみを味わうことがないよう、願っています。

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