なぜ私の母はものみの塔に入信し、その結果私のような子どもができあがってしまったのか。
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私は長い間、母に興味がありませんでした
私は長い間、母にあまり興味はありませんでした。
その理由は、「私は母にとって、要らない存在なんだな」と感じていたからだと思います。
私は、自分の意見を言う自由も信教の自由も与えられず、ただひたすら組織に忠実であるよう育てられました。
そのような育てられ方をされたため、当時、母の教育は「子どものため」というより「組織のため」だと感じていました。
母としては、子どもたちがハルマゲドンで滅ぼされないために必死だったのだと思いますが、そのように組織を盲信する母を見る私の目は冷めていました。
人間として素晴らしいと思う信者以外の方を見ても、結局「でもあの人は『この世』の人だから」という結論で終わらせる母や周りの信者たち…。人としての心、自由意志を失った組織のロボットを見ているような感覚でした。
組織は信者たちに「エホバ(実際にはものみの塔組織)に奴隷として仕えなさい」と指示を出し、際限のない規則を作り(参考:メールの絵文字にも制限)、自分の頭で考えないように仕向けているので、組織に染まるほどそのようになってしまうのは必然ですが…。
多くの問題があるものみの塔の指示する子育て方法に対して、「組織そのものは問題外だとしても、組織の指示していた子育て方法は良いものではないのか?」という意見も受けたことがありますが、もし組織の指示した方法が正しかったのならば、私を含むこれほど多くのエホバの証人の子どもたちが心の病を抱えるようになったり、組織を離れた子どもたちと家族の絆が破壊されることもなかったでしょう。
ものみの塔の指示する子育て方法のどこが問題か?
ものみの塔の指示する子育て内容にも、もちろん良いものもあります。しかしそれらは一般の子育て本や心理学の本などでも述べられている内容です。
組織はそのような良い内容のものも述べつつ、ものみの塔独自の子育て方法を盛り込んでいます。信者たちは組織の言うことは全て正しいと信じるようにされているので、それを実行してしまった信者たちが多いのです。
ものみの塔独自の教育内容で、特に子どもたちに悪影響をもたらしてきたものは、下記の点だと思います。
- 「エホバの証人以外の人達は悪魔サタンの影響下にある、そして間もなくハルマゲドンで滅ぼされる」と教え込んできたこと
- 誕生会、クリスマス、七夕、ひなまつり、節分、正月、祭り、焼香、国家・校歌斉唱、選挙、格闘技などあらゆることを禁止してきたこと。
「明けましておめでとう」と言うこと、年賀状を書くこと、運動会での応援合戦や騎馬戦なども禁止しています。組織の戒律は細かく分類すれば3千にも及ぶと指摘する人もいます(参考『カルトの子』)。このようなあらゆる規制を作り強制的に守らせ、また信者以外の子どもたちと深くかかわらないようにとの指導をしてきたことにより、学校でいじめを受ける信者の子どもたちが多数発生しました。 - 一般社会をサタンの支配下にある邪悪なものとして「世」と呼び、絶対に協調したり倣ったりすべきでないと厳しい警告を発してきたこと。
そのため多くの信者の親が、信者以外の子どもとの交友を制限してきました。これにより信者以外に友人がいない状態になり、脱会を難しくさせている一因となっています。 - 体罰を推奨してきたこと。
現在も組織は正式に体罰を禁止していないため、一部の信者の間では水面下で行われているようです。そのため今でも身体に親からの虐待の痕が発見された、信者の子どもが保護される事例も起きています。
ご参考までに、体罰(子どもをたたく、ける、つねる、家の外やベランダに出す、ご飯を与えない、など)についての調査結果を記載します。2002年、体罰を受けた3万6千人を対象にした、有名なアメリカの調査では、体罰は一時的には親の命令に従う「効用」がある一方で、長期的には①攻撃性が強くなる②反社会的行動に走る③精神疾患を発症する、などのマイナス面が見られることが判明しています。 - 条件付きの愛しか与えないようにさせてきたこと
自分の宗教信者以外には差別的な見方をさせています。また子どもも組織に従う場合には「愛情」を注がれますが、従わない場合はムチ打ちや食事を抜く、無視をするなどの「懲らしめ」を与え、事実上エホバの証人社会から抜け出せないようにしてきました。(地域差・各家庭での差はあります) - 生きていく上で最も大事な自己肯定感を育てないようにしてきたこと
私は長年保育に関わってきた中で、人間が生きていくときに一番大切なのは自己肯定感(自己評価)だと確信しています。
自己肯定感とは、「自分は生きている価値がある」「自分は大切な人間だ」という気持ちのことです。親から「自分のいいところも悪いところも、みんな受け入れられ、愛されている」というのが子どもに伝われば、子どもは輝きます。
残念ながらものみの塔の指導してきたこと(たとえば「人間は無力で無能である、エホバ(実際にはものみの塔組織)だけに頼るべきだ、それに従わない場合は生きる価値のない人間だ」と叩き込んできたこと、子どもから様々な自由を奪ってきたこと、体罰など)は、子どもから自己肯定感を奪うものでした。
秋本弘毅著『エホバの証人の子どもたち』に、外部からは理解されにくい、エホバの証人の子どもゆえに生じる苦悩が分かりやすく書かれています。たとえ無事に脱会することができても、子どもたちのその後の人生には多くの困難が待ち受けています。
私は上記のような自己肯定感をなくす方法で育てられたため、そしてハルマゲドンと迫害の恐怖を植え付けられたため、子どもの頃から自殺願望を持つようになりました。子ども時代には家族旅行など、本来は楽しいはずのイベントもありましたが、ものみの塔の教義ゆえその楽しさの上には恐怖が覆いかぶさり、心から楽しむことはできませんでした。
そして現在、「背教者」となった私のことを母はどのように思っているか。恐らく、「真理から離れた」(組織から離れることを、信者はこのように呼びます)子を持つ多くの信者たちと同様、「自分の宗教教育が足りなかった」と感じていることでしょう。
エホバの証人との関係を自然消滅させた子どもは、その後の親との関係でいろいろ悩みます。
「親は自分の教育のせいで私がエホバの証人から離れたと信じています。つまり、ものみの塔が勧める教育方法を完全に実行できず、不備があったためと思い込んでいるのです。ですから、親に証人として育てられたことで苦しめられた、と話しても、『親を苦しめているのはあなたでしょう』と言って、聞いてもらえません」
秋本弘毅著「エホバの証人の子どもたち」より
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